ポリプロピレンガイドPOLYETHYLENE GUIDE
2023.09.19

日本ポリプロ株式会社が提供する3Dプリンタ向けPPは以下の特徴を有します。
弊社独自の技術により、造形物を積層方向に引張ったときも層間で破断しにくく、さらに低反り性を兼ね備えた新しいPP材料を開発しました(図1)。一般的なPPでは、造形体の層間で破断が生じやすいため、降伏点より手前で破断していますが、特殊PPは明確な降伏を示しており、積層方向の層間接着が良好であることが分かります。3Dプリンティングにおける造形安定性を飛躍的に向上させたこの材料を用いることで、従来のPPでは難しかった高精度かつ高い積層間強度を有する造形物を得ることができます。
(a) 引張試験時のストロークと試験力の関係(引張速度:5cm/min)

(b) 造形物から引張試験サンプルの概要 (試験片:150×15×2.3mm (長さ×幅×厚み))
図1. 造形物を用いた積層間引張特性の評価
この特殊PPと各種フィラーを組み合わせることで、さらに造形物の反りを抑制し、幅広い物性を有する材料をご提案します。表1には、それぞれタルク、ガラス繊維、リサイクルCFをフィラーとして用いたMEX-02、MEX-03、MEX-05の特性をまとめました。すべての材料で造形体の反りはほぼなく、層間の接着性も良好でした。また、各フィラーの特徴を併せ持っており、幅広い曲げ弾性率を有する材料がラインナップされています。
表1.開発グレードの一般物性
|
開発グレード名 |
MEX-02 |
MEX-03 |
MEX-05 |
||
|
フィラー |
タルク |
ガラス繊維 |
リサイクルCF |
||
|
推奨造形温度 |
押出機 |
℃ |
170 |
200 |
220 |
|
ステージ |
℃ |
80 |
80 |
80 |
|
|
造形体特性 |
反り※ |
mm |
0.5 |
0 |
0 |
|
引張破断強度※※ |
MPa |
7 |
12 |
8 |
|
|
引張破断伸度※※ |
% |
8 |
6 |
2 |
|
|
射出物性 |
密度 |
g/cm3 |
1.03 |
0.96 |
1.06 |
|
曲げ弾性率 |
MPa |
950 |
1510 |
9500 |
|
|
繰り返し押出後の積層間接着性(図3) |
○ |
○ |
検討中 |
||
※100mm×100mm×100mmの四角柱を造形後、底面の浮き上がり量の平均値から算出
※※図1に記載の条件で引張試験を実施し、試験片が破断したときの強度と伸度を測定
(a) 造形体外観

(b) 造形体底面の反り状況(左:MEX-02造形物、右:一般PP造形物)
図2. 造形物における反りの発生状況
サステナブルな社会の実現に向けた取り組みとして、リサイクルを想定した材料設計を行っています。具体的には、造形後に粉砕し、再ペレット化した材料で再造形し、積層間の接着強度を評価しました(図3)。この検討において、接着強度の著しい低下は確認されず、複数回リサイクルしても造形物の強度や性能が安定して保たれることが分かりました。この結果は、本材料のリサイクル適性が高いことを示しています。
材料を循環させることで、3Dプリンタの分野でも持続可能な製造プロセスの構築が可能となり、資源の有効活用と廃棄物削減を両立させる、より環境に配慮したものづくりが実現すると考えています。
図3. リサイクル回数と積層方向の引張最大強度の関係
上記でご紹介したMEX-05は、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の端材から取り出した炭素繊維を活用した高剛性の3Dプリンタ用PPです。リサイクル炭素繊維の使用により、フィラーの製造工程におけるCO₂排出量の大幅低減だけでなく、金属やエンジニアリングプラスチックなどの異素材代替による部材の軽量化も期待されます。このような材料開発を通じて、積極的に環境負荷低減および持続可能な循環型社会の実現に貢献していきます。
今回ご紹介した3Dプリンタ向けPP材料「MEXシリーズ」は、従来のPPでは課題となっていた優れた造形性を有しており、この分野でのPPの用途拡大に貢献できる材料です。また、リサイクル適性や環境負荷低減の視点を材料設計に取り入れたサステナブルな材料で あり、今後の循環型社会にも大きな貢献が期待されます。PPでは造形が難しかった、あるいは3Dプリンタ向けに適したPPを探している場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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