ポリプロピレンガイドPOLYETHYLENE GUIDE
2025.10.27

ポリプロピレン(PP)は汎用プラスチックの一つであり、自動車から日用品、食品、医療などの幅広い分野に使用されています。医療向け PP は、医薬品容器や医療機器に適用できるよう、専用に設計されたうえで、厳格な製品管理を行ったグレードを指します。
日本ポリプロでは用途に応じた材料開発を行っており、本記事では医療分野の代表例として、以下のグレードをご紹介します。
• プレフィルドシリンジ向けグレード:ノバテック™ MA2HA
• ディスポシリンジ向けグレード:ノバテック™ MG03TH
• ダイアライザー向けグレード:ノバテック™ MTX03M
また、放射線照射後でも日本薬局方に適合する製品の開発も行っています。
| 項目 | 単位 | MA2HA | MTX03M | MG03TH | 開発材 |
| MFR | g/10min | 17 | 27 | 30 | |
| 曲げ弾性率 | MPa | 2,100 | 1,100 | 850 | |
| シャルピー衝撃強度 | kJ/m2 | 2 | 5 | 6.5 | |
| HAZE 1mm | % | 20 | 6 | 15 | |
| 主な滅菌方法 | 高圧蒸気 | 放射線 | 放射線 | 放射線 | |
| 日本薬局方(灰化試験・溶出物試験) | 適合 | – | – | 適合 | |
| ISO10993 | 適合 | 適合 | – | 検討中 | |
| DMF登録 | あり | あり | あり | 検討中 | |
プレフィルドシリンジ(PFS)とは、あらかじめ薬剤が充填されたシリンジのことを指します。通常はバイアルやアンプルに入った薬剤を注射器で吸引する必要がありますが、PFS は梱包から取り出してすぐに注射でき、簡単かつ安全に使用できます。
ポリプロピレンを PFS に適用するには、主に以下の 2 つの課題があります。
1 つは、ポリプロピレンが安全であることです。人体に有害な成分を含まず、またポリプロピレンの成分が一定以上薬剤に溶け出さないことが、日本薬局方で定められています。
もう 1 つは、ポリプロピレンが滅菌処理の工程に耐えられることです。PFS の滅菌は薬剤が充填された状態で高温(一般に 121℃)で行われるため、高温に耐えうる剛性・耐熱性が必要です。
ノバテック™ MA2HA はこの用途に向けて開発されたホモ PP で、PP の中でもトップクラスの剛性・耐熱性を有し、日本薬局方に定められた PFS 向け規格(灰化試験・溶出物試験に適合しています。PFS 以外にも、耐熱性が求められる用途に適しています。
ディスポシリンジとは使い捨ての注射器であり、注射や採血などの場面で使用される医療機器です。安全に使用するため、一般的には放射線による強力な滅菌が行われます。
ノバテック™ MG03TH は、放射線滅菌後でも高い耐衝撃性を有することが特徴のランダム PP で、ディスポシリンジをはじめ、放射線滅菌される医療機器にご使用いただけます。
ダイアライザー(人工腎臓)とは、腎臓に代わって血液中の老廃物をろ過する医療機器です。細菌やウイルスが混入すると人体への悪影響が懸念されるため、使用前にガンマ線照射による強力な滅菌が行われます。
本用途においても、容器の成分が一定以上水中に移行しないことなどの規定があります。
ノバテック™ MTX03M は、放射線滅菌後でも一定の剛性と耐衝撃性を維持できるグレードであり、ダイアライザーのケース部分やヘッダーなどにご使用いただけます。
日本ポリプロでは、医療用途で弊社材料をご検討いただく際、用途や要求特性などを確認のうえ、展開の可否や推奨グレードをご案内しています。
本記事でご紹介した以外にも対応可能なグレードがございますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
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