ポリプロピレンガイドPOLYETHYLENE GUIDE
2025.10.27

従来のPPは、汎用ポリスチレン(GPPS)やポリエチレンテレフタレート(PET)と比べて透明性が劣るため、透明性が重視される用途への展開には限界がありました。
下表は、高透明PP・GPPS・PETの材料特性を比較したものです。PPは耐熱性・耐薬品性・バリア性といった材料特性に優れているだけでなく、比重が低く(約0.90~0.91)で、軽量な製品設計が可能です。この軽量性は輸送効率や使用時のエネルギー効率を高め、ライフサイクル全体での環境負荷低減に貢献します。さらに、PPは汎用プラスチックの中でも製造時の温室効果ガス(GHG)排出量が少ないという利点があります※。
※出典:一般社団法人 プラスチック循環利用協会 プラスチックリサイクルの基礎知識2025
今回開発した高透明PP(ウィンテック™ WMG03UX、GNW1092)は、従来の課題であった「透明性の不足」を克服したバランスの良い素材として、透明分野での新たな用途展開が期待されます。

ウィンテック™は、日本ポリプロが独自に開発したメタロセン触媒技術を用いたPPです。以下の図に、従来型チーグラー・ナッタ(Z-N)触媒とメタロセン触媒を用いて製造したPPの分子構造と結晶構造の比較を示しています。
メタロセンPPは、従来のZ-N触媒で製造したPPよりも均一な分子量分布と結晶性を有していることが分かります。

これらの特性により、従来よりも高い透明性を持つPP材料の設計が可能となりました。さらに、分子鎖の均一性が高いため低分子量成分が少なく、低臭気を実現。食品容器や飲料ボトルなどの用途にも適しています。
この記事では以下2種類の高透明グレードについてご説明します。
ウィンテック™WMG03UX: 射出向け・デザートカップ、冷蔵庫引き出しなど【GPPS代替】
ウィンテック™GNW1092: 延伸ブロー向け・透明ボトル(化粧品・食品用ボトル)【PET代替】
下図には、従来PPであるMG03BDとウィンテック™ WMG03UX/GNW1092の透明性比較(HAZE)結果を示しています。
両グレードとも、従来PPと比較して透明性が大きく向上していることが分かります。

射出成形用に開発されたウィンテック™ WMG03UXは、上述の通り、従来のPPでは実現が難しかった高い透明性と優れた外観を備えており、パッケージや家庭用品など幅広い分野での活用が可能です。
さらに、GPPSと比較して高い衝撃強度を有しており、軽量でありながら落下時の破損リスクを低減できるため、GPPSからの切り替えが期待されます。


ウィンテック™ GNW1092は、高い透明性を有しながら、一般的なPPでは難しい延伸ブロー成形性を改良した材料です。
この特性により、化粧品容器や食品用ボトルなど、意匠性と機能性が求められる延伸ブロー用途でPETなどの透明樹脂からの置き換えが期待されます。
一般的にPPは延伸ブローが難しい材料です。成形難易度が低い形状(単純形状・厚肉など)であれば、PPでも比較的広い温度範囲で成形が可能ですが、成形難易度が高い形状(複雑・薄肉など)では、成形可能な温度幅が非常に狭く、安定した成形品を得ることが難しいという課題がありました。
以下の図は、従来PPを用いて厚みが異なる成形品(厚肉・薄肉)の「成形可能な温度幅」を比較した結果です。
厚肉のボトル形状(肉厚0.5~0.8mm)では約20℃の温度幅で安定した成形が可能ですが、薄肉ボトル(肉厚0.2~0.3mm)ではその幅がわずか7℃にまで狭まり、成形条件の設定が極めてシビアになります。

こうした課題に対して、ウィンテック™ GNW1092は材料設計を工夫し、良好な透明性を有しながら成形可能な温度幅を大幅に改善することに成功しました。
下図の比較結果に示すように、従来の延伸ブロー用PPでは7℃だった成形温度幅が、GNW1092では25℃となり、幅広い温度領域で安定した成形品が得られます。
これにより、これまで困難だった複雑形状の製品等への適用が期待されます。


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