ポリプロピレンガイドPOLYPROPYLENE GUIDE
2026.08.31

日本ポリプロ独自の技術により、造形品を積層方向に引張ったときも層間で破断しにくく、さらに低反り性を兼ね備えた新しいPP材料を開発しました(図1)。一般的なPPでは、造形品の層間で破断が生じやすいため、降伏に至る前に破断します。一方、特殊PPは明確な降伏を示しており、積層方向の層間接着が良好であることが分かります。3Dプリンティングにおける造形安定性を飛躍的に向上させたこの材料を用いることで、従来のPPでは難しかった高精度、且つ高い積層間強度を有する造形品を得ることが可能になります。
(a) 引張試験時のストロークと試験力の関係(引張速度:5mm/min)

(b) 造形品から引張試験サンプルの概要(試験片:150×15×2.3mm (長さ×幅×厚み))
図1. 造形物を用いた積層間引張特性の評価
この材料をベースにさまざまな改良を加えることで、多様なニーズに対応したソリューションを提供します。表1には、それぞれの特徴を有する開発品およびMEX05の特性をまとめました。いずれの材料も反りを大幅に抑制しており、良好な層間接着性を示しました。また、用途に応じた特徴を併せ持っており、幅広い物性を有する材料がラインナップされています。
表1.MEXグレードの物性一覧
|
開発グレード名 |
開発品① |
開発品② |
MEX05 |
||
|
フィラー |
タルク |
なし |
リサイクルCF |
||
|
MFR |
g/10 min |
21 |
26 |
6 |
|
|
推奨造形温度 |
押出機 |
℃ |
220 |
220 |
220 |
|
ステージ |
℃ |
80 |
80 |
80 |
|
|
造形品特性 |
反り※ |
mm |
0.5 |
4.0 |
0 |
|
引張破断強度※※ |
MPa |
12 |
16 |
8 |
|
|
引張破断伸度※※ |
% |
10 |
14 |
2 |
|
|
射出物性 |
密度 |
g/cm3 |
1.03 |
0.90 |
1.06 |
|
曲げ弾性率 |
MPa |
2000 |
810 |
9500 |
|
|
色合い |
ベージュ |
透明 |
黒 |
||
※100mm×100mm×100mmの四角柱を造形後、底面の浮き上がり量の平均値から算出
※※図1に記載の条件で引張試験を実施し、試験片が破断したときの強度と伸度を測定
3Dプリンタによる造形において造形時間を短縮することができれば、生産性向上が期待されます。開発品①(タルク含有グレード)は、汎用PPと比較して、造形速度を上げても、均一で良好な外観を維持することが可能です。図2は造形速度を上げて造形した例になります。汎用PPでは全く造形ができない速度においても、開発材は造形が可能であることが分かります。材料の高速造形適性を向上することで生産性を高め、設備稼働時間短縮も含めたトータルコスト低減が期待できます。

図2. 同一造形速度における造形品の外観評価(造形速度=12.5mm/s)
(a)汎用PP (b)開発品①
開発品②(ノンフィラーグレード)は、透明性に特化した3DP向けPPであり、従来よりも透明性や着色時の発色性に優れた造形品を得ることができます。また、フィラーを含有しない為、一般的なPPと同じ比重であり、造形品の軽量化にも貢献します。
透明性を活かしたオブジェクト・デザインモデル等、透明性・発色性・視認性が求められる用途への適用が期待されます。
図3. 造形品の透明性の評価
(a)汎用PP (b)開発品②
MEX05は、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の端材から回収した炭素繊維を活用した高剛性グレードです。炭素繊維が有する軽量・高剛性の特徴を活用し、PPの軽量性を維持しながら高い剛性を付与することができます(表2)。また、リサイクル炭素繊維の採用により、フィラーの製造工程におけるCO₂排出量削減にも貢献します。軽量性と高い機械特性の両立により、工業部品(自動車等)、治具や構造部材・プロトタイプ作製等への応用が期待されます。
表2. 3Dプリンタ用途樹脂同士の物性比較
|
項目 |
ABS※ |
PETG※ |
MEX05 |
|||
| 密度 | g/cm3 | 1.05 | 1.27 | 1.06 | ||
| 曲げ弾性率 | MPa | 2650 | 2100 | 9500 | ||
|
比剛性 |
m2/s2 | 2520 | 1650 | 8960 | ||
※3Dプリンタ用樹脂として市販されているグレードの結果を使用
今回ご紹介した3Dプリンタ向けPP材料 MEXシリーズは、従来のPPで課題となっていた反りや層間接着性を改善し、優れた造形性を実現しています。また、高速造形性、高い透明性や剛性のような、生産性の向上や造形品の高性能化が期待されます。これまでPPでは造形が難しかった、或いは3Dプリンタ向けに好適なPPを探している等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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