ポリプロピレンガイドPOLYETHYLENE GUIDE

高透明/耐寒容器向けポリプロピレン

2025.10.27

高透明/耐寒容器向けポリプロピレン

ポリプロピレンはなぜ透明にならないのか

PP は一般に半透明な樹脂として知られています。これは、PP が結晶を有する結晶性樹脂であることに起因します。
一般的な PP 製品内部では、結晶化が進むと結晶サイズが大きくなり、光を散乱して半透明な見た目になります。
一方、透明性に優れる PS のような樹脂の多くは結晶性を持たない非晶性樹脂に分類され、光を散乱する構造を持たないため、透明な外観となります。PET は PP と同じ結晶性樹脂に分類されますが、結晶化が非常に遅く、結晶が形成される前に冷却されることで、PS と同様の透明性が得られます。

メタロセン PP ウィンテック™の特徴

ウィンテック™は、日本ポリプロが独自に開発したメタロセン触媒技術を用いた PP です。以下の図に、従来型チーグラー・ナッタ(Z-N)触媒とメタロセン触媒を用いて製造した PP の分子構造と結晶構造の比較を示しています。
メタロセン PP は、従来の Z-N 触媒で製造した PP よりも分子量分布と結晶性が均一であることが分かります。

図 1. チーグラー・ナッタ触媒とメタロセン触媒を用いて製造される PP の比較

これらの特性により、従来よりも高い透明性を持つ PP 材料の設計が可能となりました。さらに、分子鎖の均一性が高いため低分子量成分が少なく、低臭気を実現。各種食品容器などの用途にも適しています。

開発材(射出成形向け高透明 PP)

日本ポリプロでは、メタロセン触媒技術に材料設計の工夫を加えることで、光を散乱させる成分をさらに減らし、より高透明な PP を開発しました。
新たに開発した高透明 PP 材料は、PP の中でも非常に低い HAZE 値を示し、透明性が良好であることが分かります。下記表 1 の評価結果は 1mm 厚みのものですが、肉厚が薄くなるとさらに透明感は向上します。
また、透明性以外の射出物性は一般的な透明 PP と同等であり、従来の透明 PP と同様の用途で使用可能です。

表 1. 射出成形向け高透明 PP の物性表


PPは密度約0.9のプラスチックであり、PSPETをそのまま置き換えるだけで容器の軽量化や樹脂使用量の削減が可能です。
日本ポリプロは、高機能なPPを通じてこのような課題の解決に貢献します。

EA6CT、及び開発材(押出成形向け高透明PP)

食品容器の蓋などにおいて、ディスプレイ時の内容物の視認性は重要な性能の一つであり、より高い透明性が求められる場合、従来はPSPETのような非晶性樹脂が使用されてきました。

PPで高い透明性を達成するためには、結晶性の低いランダムPPが一般的に用いられますが、ホモPPと比べて容器としての強度が低下するため、高い剛性が求められる用途では他素材からの切り替えが難しいとされてきました。

この課題に対応するため、材料設計の工夫により他素材並みの透明性とホモPP同等の高い剛性を両立させた透明シート用グレード「EA6CT」を開発しました。EA6CTは熱成形性にも優れており、食品容器包装向けなどでの透明PPシートの活用が進んでいます。例えば、PP発泡容器本体と高透明PPを熱成形した蓋を組み合わせることで、モノマテリアル化の実現に貢献します。

また、最近ではEA6CTよりも高い透明性を有するPPの開発にも着手しています。この開発材は、EA6CT同等以上の剛性とさらに良好な透明性を両立する材料として、今後、高透明PPシートの適用範囲を大きく拡げることが期待されています。

2. 一般透明PPEA6CT、押出成形向け高透明PPの比較

開発材(透明耐寒PP)

市販の透明耐寒容器として、コンビニエンスストアで販売されているアイスコーヒーなどのドリンクカップがありますが、使用されている素材はPETや耐寒PSが主流です。

一般的にPPで耐寒容器を設計する場合、耐寒衝撃性の高いブロックPPが使用されますが、透明性が低下するため、内容物が見えにくいという課題がありました。

今回開発した透明耐寒PPは、材料設計の工夫により他素材と同等の透明性および耐寒衝撃性を実現し、透明耐寒用途におけるさまざまなアイテムで、他素材代替による容器の軽量化や樹脂使用量の削減に貢献します。

3. 市販品(PETカップ)と透明耐寒PPの比較

※市販品はカップ形状、開発材はカップ形状に成形した成形品の測定結果

まとめ

本記事では、透明分野(射出成形、押出シート向け)での適用が期待される高透明PPや、耐寒透明PPについてご紹介しました。従来PPよりも改善された高い透明性を有するPP群は、現在より透明性の高い他素材が使用されている用途においても、素材代替による製品の軽量化(樹脂使用量の削減)などに貢献できると期待されています。ご不明点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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