ポリプロピレンガイドPOLYPROPYLENE GUIDE
2026.08.31

PP は一般に半透明な樹脂として知られています。これは、PP が結晶を有する結晶性樹脂であることに起因します。
一般的な PP 製品内部では、結晶化が進むと結晶サイズが大きくなり、光を散乱して半透明な見た目になります。
一方、透明性に優れる PS のような樹脂の多くは結晶性を持たない非晶性樹脂に分類され、光を散乱する構造を持たないため、透明な外観となります。PET は PP と同じ結晶性樹脂に分類されますが、結晶化が非常に遅く、結晶が形成される前に冷却されることで、PS と同様の透明性が得られます。
PPは、プロピレンという分子が多数連なった化学物質であり、一般的にはチーグラー・ナッタ(Z-N)触媒を用いて製造されています。この触媒を用いて製造したPPは、連なったプロピレンの長さ(=分子量)や結合の仕方にばらつきがあり、結晶構造の不均一性が高くなることで、透明性の低下を招く要因となります。
WINTEC™は、日本ポリプロ独自のメタロセン触媒を用いて製造されたPPで、Z-N触媒とは異なり、分子量や結合の仕方のばらつきが少ないことを特長としています。分子鎖のばらつきが少ないことで、結晶化挙動や結晶構造の均一性も高くなり、その結果、サイズの揃った微細な結晶が多数形成されます。
以下の図に、チーグラー・ナッタ(Z-N)触媒を用いて製造したPPと、メタロセン触媒を用いて製造したPPの比較を示します。

図 1. チーグラー・ナッタ触媒とメタロセン触媒を用いて製造される PP の比較
WINTEC™は、これらの特性により、従来よりも高い透明性を有するPP材料の設計を可能にしています。さらに、分子鎖の均一性が高いため低分子量成分が少なく、低臭気を実現。食品容器を含めた幅広い用途への適用が期待されます。
食品容器の蓋などにおいてディスプレイ時の内容物の視認性は重要視される性能の1つであり、より高い透明性が必要な場合、従来はPSやPETの様な非晶性樹脂が用いられてきました。PPで高い透明性を達成する為には、結晶性の低いランダムPPが一般的に用いられますが、ホモPPよりも容器とした際の強度が低下する為、高い剛性が必要とされる用途では他素材からの切替が難しいとされてきました。
この課題に対応する為、材料設計の工夫により他素材並みの透明性とホモPP同等の剛性を両立させた透明シート用グレード「EA6CT」を開発しました。
EA6CTは熱成形性等にも優れる為、食品容器蓋等に好適な材料となっています。容器の蓋をPPにできると、例えば、PP発泡容器等の容器本体と高透明PPを熱成形した蓋とを合わせた、容器のモノマテリアル設計が可能となります。レンジアップする弁当容器用途では、食品の油跳ね防止の為のフィルムも不要となるため食品容器としてのプラスチック使用量削減も期待できます。
また、最近EA6CTよりも高い透明性を有するPPの開発に着手しています。この開発材はEA6CT同等以上の剛性と更に良好な透明性とを両立する材料として、今後、高透明PPシートの適用範囲を更に拡げることができる材料として期待しています。
表1. 一般透明PP、EA6CT、押出成形向け高透明PPの比較

市販の透明耐寒容器としてコンビニエンスストアで販売されているアイスコーヒーのようなドリンクカップ類や冷菓等がありますが、使用されている素材はPETやPSがメインとなります。一般的にPPで耐寒容器を設計する場合、耐寒衝撃性の高いブロックPPを使用しますが、透明性が悪化する為、内容物が見えにくいという課題がありました。
今回開発した透明耐寒PPは、材料設計の工夫により他素材と同等の透明性及び耐寒衝撃性を実現し、透明耐寒用途における様々なアイテムで他素材代替による容器の軽量化に貢献します。
表2. 市販品(PETカップ)と透明耐寒PPの比較

※市販品はカップ形状、開発材はカップ形状に成形した成形品の測定結果
本記事では、押出成形向けの高透明PPや、耐寒透明PPについてご説明をしました。従来PPよりも改善された高い透明性を有するPP群は、これまで透明性の高い他素材が使用されているご用途においても、素材代替による製品の軽量化(樹脂使用量の削減)、容器のモノマテリアル設計を通じたリサイクル適性の向上等で貢献ができると期待しています。ご不明点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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